2015年5月13日水曜日

オーダー品納品完了! 3

 さて本体とネックレス部分を繋いでアンカーにピンを差し込み、とうとう完成!と思ったのですが、装着してみるとなんだか変です。

まっすぐに下がらないで少し傾いています。


色々原因を探ると、どうやらアンカー部分の位置の1mm以下の誤差が原因でした。

通常のチェーンなら問題無いのでしょうが、使用しているステンレスワイヤーにはテンションがあるので、長さが微妙に異なるとそのテンションの為にワイヤーが本体から出て来る位置がズレてしまうのですね。
仕方ないので、急遽腰の部分に補助のステーをくわえて溶接し、ワイヤーの動きを規制する事にして解決しました。

最後に表面のヘアライン仕上げを施して全体を磨き直します。

と言う訳でロング・ペンダントがようやく完成。

 石座中央の爪位置が左右でズレているのは、石のカットが左右微妙にずれているせいで、それに爪位置を合わせた為です。
 PtやSilver等の貴金属と違いチタンの爪は固くて曲がりにくく、石の凸凹した形状に合わせて変形もしにくいのでカットされた石の平面の部分に爪がかかるようにしないと、爪を倒している最中に石のカットの峰の部分に無理な力がかかって、ヒビが入ったり割れたりする怖れがあるからです。
 今回の爪も1.2mmの丸線から削りだしたもので、幅は削って細くしましたが厚みはあるので、石留め前に曲げる部分のみ焼き鈍しして曲げやすくしてから留めています。


 腰板に補助ステーを付けた、裏側のアンカーとネックレス接合部分。
 先程ようやく作品を受け取られたお客様と電話でお話しして、『作品自体は色味も無いしキラキラ光りもしないし意外と地味なので、お手持ちのスカーフやパールのロングネックレス等と一緒に着けられたら、それらを引き立てる役になるから色々遊んでみて下さい』とお話ししたら『楽しみです!』と喜んで下さいました。

 今回の作品はデザインも直ぐに浮かんだし、イメージ通りに形に出来た方なので自分では珍しく気に入ってます。

モチロン裏の処理や鏡面仕上げ等課題はまだまだ山積みですが、溶接技術も確実に向上しているのを実感しました。
今後も技術の向上に精進したいと思います。


オーダー品納品完了! 2

さて前回は中石の石座まで進みました。
その後は本体の開口部を石座に合わせて整形し、本体の高さを出す為に腰板を貼ります。



 石座をセットしてみて石の高さ、石のお尻が裏側に出っ張らないか等チェックします。
その後は石座の溶接作業。
爪の側面と本体を直接溶接しても良かったのですが、溶接が思った様に行かず爪か本体の縁のどちらかが想定以上に溶けてしまう危険が考えられるので、安全策として今回は爪の位置で本体に溶接したいので石座の底面にステイを取り付けて本体と接合する事にしました。


ちょっとブサイクなんですが、今のワタシの溶接技術ではこういうリスク回避が仕方なく必要なんですね。
もう少し確実にキレイな溶接が出来るテクニックを早く身につけたいものですが、ソレには数多く失敗もしないといけないから、痛し痒しです。

次はネックレスを本体と繋ぐアンカー部分の溶接。
このアンカーに開いている穴にピンを差し込んで、ネックレスの端の丸カンを留めます。

ネックレスにはアジャスター・チェーンを付けて欲しいというご注文なので、それも丸線を加工して造りました。
以前作っておいたターンテーブル。
これにバイスをセットしてくわえた平角の棒に、チタンの丸線を焼き鈍しながら巻き付けていきます。
 最初に造ったチェーンはコマが小さ過ぎてNG。
二回目は巻き付ける棒を一回り大きくして再チャレンジ。
バレル研磨とバフで仕上げて1.5mmのステンレスワイヤーをセットしてネックレス部分は完成。

反対側の端にはアンカーに取り付ける丸カン部分を装着。

ついでに『HEDGEHOG』のブランド刻印と『Ti』の刻印を打刻したプレートも作って付けました。


さて次回はいよいよ完成。






2015年5月12日火曜日

オーダー品納品完了! 1

以前から依頼されていたお客様からのオーダー品が先日無事に完了し、先程お客様のもとに届き喜んでいただけました。
完成して発送してから、お客様の手許に渡るまで少し時間がかかったので、その間『気に入っていただけるかなあ〜』と不安な時間が続きましたが、これでホッとしました。

お客様は奈良県にお住まいの書道の先生をなさっている女性の方です。
以前も何点かオーダーしていただき、その度にワタシとしては面白い仕事ができるので楽しみなお客様です。
関西の親戚のお友達と言う事もあって何度かお目にかかっているので、お客様の個性が解っているので、『今度はこんなのが欲しい』とワタシには結構難しい注文を出されるのですが、それがかえって挑戦しがいが在って面白いのです。
 先生として生徒さんの前に立たれる事も多い方と伺っているので、無難で平凡なモノではダメだろうし、かといって奇抜過ぎてもダメ。
でも、『インパクトが在って存在感の在るもの』というご注文。
確かにそういう作品も着けこなせるだけの、静かなパワーと存在感をお持ちの方なのです。

今回は、鳩尾ぐらいのところまである、長めのペンダントというご注文でした。
ご相談の結果、中石にインパクトのある石を持って来てチタンの素材感を生かして作る事に決定。
さてソレからが結構時間かかりました。
たまたま二月の展示会向けに使う石を探しに行った宝石屋さんで、珍しい石に出逢って方向性が決まりました。
トルマライズド・クウォーツという石。
水晶の中にトルマリンと言う石の針状結晶が入ったものです。
ルチル・クウォーツという金色の針状結晶が入った水晶は一般的に良く市場でも見かけるのですが、この石は透明な水晶と黒い針状結晶というモノトーンの、言ってみれば地味な石。
しかし、この白黒の取り合わせは書道の墨と紙の組み合わせと同じ。
書道の先生にはピッタリじゃないか、と即座に購入しました。

石が決まればソレを生かすシンプルなデザインは思ったより簡単に浮かんできます。

コレを基にまずはアルミ板でサンプルを作ります。


このサンプルでデザインの承諾を戴き、製作を開始しました。

まずは表面になる板を1.5mmのチタン板から切り出して整形します。

整形後は裏側を鏡面に磨き上げます。 
次に石枠。
最初に造った石枠は、爪の太さが少々細すぎたので造り直しました。
コチラが最終的に使用した石枠です。

この後は本体部分の腰板を貼り、石枠を溶接と進むのですが、ソレは次回。