2015年3月26日木曜日

打ちのめされて来ました! 中村ミナト作品展


今日は近代美術館・工芸館で中村ミナトさんのジュエリー作品に打ちのめされて来ました。

 いや〜、スゴイ!スゴイ人だ!
私がジュエリーの勉強を始めた頃には既に有名になってらしたので、『宝石の四季』などの雑誌でも度々作品を拝見していました。
 また、女史のアトリエであるメイフラワー・アトリエのみなさんとお知り合いになるにつれ、お目にかかってお話しする機会も度々あったのですが、気さくで気取らない方なので、当時はそんなに緊張感もなくお話していたのです。

 しかし、こうやって今回の様にその作品をまとめて年代順に拝見すると、女史のジュエリーを通しての自己表現の可能性へのチャレンジと言ったものが見えて来ます。
 その表現のスペースを拡げて来られた軌跡が、今の日本のジュエリーの世界に大きな影響を与えているのがよく解りました。

 言わば南極海や流氷の海を氷を割って進む、『砕氷船』の様な方だったのですね。
彼女の通った跡は氷が割れて、水面が大きく広がって行くのです。
 様々な分野に彼女の様なICE BREAKERと呼ばれる方は居るのでしょうが、その苦労はいかほどか・・・。

 イヤ、きっと別に苦労じゃないんだろうな。
「ジュエリーはこうあらねば」という既成概念等、彫刻を志していた女史には縁の無いモノだったろうと思います。
 『身にまとう彫刻』とはどんなものだろう?
どうしたら自分の思い描いた立体的な空間を、身体の上と言うミニマムなスペースに転移出来るか・・・・、楽しんでやられていたとしか思えない。

 二枚目の写真の作品。
まさに、屋外に設置する女史の彫刻作品を思わせるブローチ。
三枚目の写真右ページ、ドーナツ状の円盤をひねった時に偶然現れる造形を、そのまま凍結した様なブローチ。
ワタシはこの両シリーズに、感銘を受けました。

 デザインを考えてる時に、偶然ひねった紙から思いついたのかもしれないけれど、そういう過程も含めてこういう形を見つけた時って、本当に楽しくてワクワクするだろうなあ〜と思うのです。

 もちろん、装身具としての完成度の高さがその発想をオモチャで終わらせていない、と言う事がベースに在るのですが。
 かといって、技術的にもの凄くハイレベルな事をされてる訳ではないのです。
出来たものを見れば、『な〜んだ、そう言う事か』なんだけれど、その面白さを見逃さない感性。
それだけでなく、それを完璧な作品になるまで細部をリファインして行く作業こそが、素人や凡人には真似の出来ない技と言えます。
そういう感性を錆び付かない様に日々研ぎすましつつ養い続け、常に自分にとって最新の面白いものを追い求めていく姿勢を永年続けて来られた訳です。

 こういう作品の数々を見ると、しかも20年も30年も前にあんな素晴らしい作品を創られたら、しかもそれがマッタク古さを感じさせないとしたら、じゃあコレから私はナニを創れば良いの・・・・?
 なんだかナニを創っても、彼女の影響から抜けられない様な気までして来るじゃ在りませんか。

まあ、天才を相手にひがんでも仕方ない。

凡人の私には、それでも私にしか出来ない、やらずにはいられない、私しかやらないだろう事をやるだけだ。







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