2011年6月3日金曜日

安宅コレクション

 先日の日曜美術館で、東洋陶磁の至宝を集めた安宅コレクション、その収集に執念を燃やした安宅英一氏の生き様を特集していました。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
 たしか2007年秋に、東京日本橋に新装なった三井記念美術館でコレクション展が開催されて観に行きました。

 安宅コレクションは、かつて日本にあった総合商社安宅産業の創業者の息子安宅英一氏が収集したコレクションですが、安宅産業1976年倒産するとコレクションの散逸を惜しんだ債権者が専用の美術館を建ててまるごと大阪市に寄贈、現在の大阪市立東洋陶磁美術館になっています。


 創業者の息子として社内で絶大なる権力を持ち、会社の金迄使って公私混同も甚だしい陶磁器のコレクションに莫大な金をつぎ込む・・・。
羨ましいと言えば羨ましいけど、周りは迷惑だったろうなあ。
そのせいもあるのか会社も倒産させてしまうし。
 コレクションは日本の国民にとっては有意義なものだけど、倒産した会社の社員達はいったいどういった気持ちでこのコレクションを見るのだろうか・・・。


 実はワタシ、このコレクションを倒産の前年の1975年東京日本橋三越百貨店で開催された『中国陶磁名品展』で見ているのです。

初めて見る景徳鎮窯の素晴らしい染め付けの作品が持つ圧倒的な迫力に、震える程感動したのを今でも鮮明に憶えています。


 当時高校生だったワタシが、なんでまた中国陶磁を観に行ったのか忘れてしまいましたが、あまりに感動したので、後日母をけしかけてもう一度観に行ったのを憶えています。
翌年には高麗・李朝の名陶を集めて日本橋高島屋で展覧会を開催していてそれも観に行ったのですが、流石にまだ十代のワタシには高麗・李朝の奥ゆかしく優美で繊細な美しさはまだ解らなかった様でした。
 やはりダイナミックな染め付けの深みのある色と躍動的な線描に目を奪われたのでしょうし、比べると朝鮮のものはやはり地味に写ったのでしょう。


 ところが、2007年の時は全く正反対の感想を持ったのです。
ダイナミックな中国陶磁の染め付けには左程感じる物が薄かったのに比べ、朝鮮の陶磁器の薄焼きで淡い藍の染め付けなど実にデリケートで、絵付けも良い意味で力が抜けていて達人が遊びで書いたような感じとでも言うか・・・。
実に味があるじゃないですか。
なんで昔は解らなかったのかねえ。


 世阿弥の言葉に『時分の花』というのがあります。
チョット意味は違うけど年齢相応感じるものも変わると言う事でしょうかね。
そう言う意味で、見かけの派手さに迷ってしまった自分を思い出して、少々恥ずかしかったですね。
まあ人並みに歳を取って変化してる、というのは安心して良いのかもしれないけど。


ともあれ、是非一度大阪の東洋陶磁美術館に行き、ゆっくり鑑賞したい物です。
出来たら障子越しの秋の午後の光で、美しい庭でも眺めながら美味しいお茶に和菓子を戴きながら一点一点じっくりと手に取って眺めたい物ですねえ〜。
オーナーにでもならなければ叶わぬ夢ですが・・・。

安宅英一氏が羨ましいなあ〜!



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