2010年4月16日金曜日

情報戦争

作品展前はゆっくり読書する時間もないので、書店にも行ってなかったのですが、先日久しぶりにいつもの書店を冷やかしていて、気になった本を見つけて買ってしまいました。
いつもはサイズ的に読みやすい文庫本、新書サイズの棚から選ぶのですが、今回は分厚い単行本。


トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所 中田整一著
講談社 ¥1800

第二次大戦中、アメリカが日本兵捕虜を尋問して軍事情報収集をしていた状況が、丁寧な取材で明らかにされています。
 難解な日本語を使える人材の募集から人材育成、組織の構築と円滑且つ合理的な運営に依って日本の軍事機密が捕虜から得られ、実際の作戦に反映されて効果を上げてゆく様が描かれているのですが、アメリカという国は原爆製造のマンハッタン計画、月探査のアポロ計画など、壮大な計画を巨大な組織で実行するマネージメント能力に長けているとつくづく感心しました。
米軍も尋問等のテクニックはイギリスで学んだ様ですが、大規模にシステム化するのはアメリカが得意みたいです。
国土の広大さ、工業生産力、食料自給率、労働人口も含めた日本との国力の違いを痛感させられ、よくこんな国と戦争して勝てると思ってたなあ、と当時の日本の軍の指導者の無知にあきれ果てるばかりです。
 かたや戦中の日本は陸海軍が反目し合い、情報の収集分析共有すら満足に出来ず、戦略も無しに戦争をはじめ、どこで終わらせるかも考えてなかった訳ですから。

 もうひとつ、情報というものの取り扱いについても国民性を感じました。
国家が取り扱った情報は情報公開法で原則公開なのですが、細かなものまで公文書館に保管され、国民から請求が在れば取り出せるというところ。

 最近日本では沖縄返還に伴う核密約の文書が破棄されたとかニュースでも問題になってましたが、これもアメリカの公文書館で機密解除されて公開され、密約の存在は白日の下に曝された訳です。
どんな都合の悪い情報も、とにかく保管して歴史的資料として後世の役に立てようとする姿勢は日本も見習わなくてはならないですよね。

著者は元NHKの番組プロデューサーで、事実の羅列ではなくなかなか読みやすいので、興味がある方は本屋さんで立ち読みしてからお買い求め下さい。
でも、単行本は重くて読みにくいので文庫になってからでも遅くはないですね。



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