2011年3月7日月曜日

名人VS達人

 昔『名人と達人の違い』について誰かが話していたのを思い出しました。
その人は落語家を例にとって話していたんです。
話を聞いてると目の前に江戸の風景が見えて来る・・故・古今亭志ん朝師匠
話を聞いてると江戸時代に入り込んでるような気になる。・・・立川談志師匠


 曰く、前者が達人で後者が名人だそうです。
修行を重ねてたどり着くのが達人の境地、名人というのはそういうものではないそうです。
一昔前なら桂文楽は達人で古今亭志ん生は名人・・・ということになるんでしょうね。


 何となく納得出来る例えですよねえ。
理屈でいくら修行して同じ様にやっても、その人にしか出せない味がある。
その人が生きて来た人生が芸の骨格を形作って行く訳で、修行で身に付くのはその上に着く筋肉だけなんでしょうね。


なんでこんな話を思い出したかと言うと、先日見た映画のせいです。
無料動画サイトで放映していた
『THAT'S ENTERTAINMENT』


MGMというハリウッドの映画会社が製作して来た数多くの名作ミュージカル映画をベースに、かつて映画に出演した名優達が素晴らしい作品の数々を、かつてのスタジオでそのハイライトシーンと共に紹介してくれる、という凝った企画のこの映画。
かなり昔の映画に成ってしまいましたが、これまで何度もTVで見たりビデオやDVDで見て来ました。
全盛期の撮影用セットの大掛かりな事には呆れてモノも言えないくらいですが、そんなところにもアメリカのショービジネスの底力を感じてしまいます。
でも、何度見てもいい映画です!


妖艶で素晴らしい脚線美のシド・チャリッシ
かのライザ・ミネリの母ジュディー・ガーランド
なんかも出ているこの映画。


 名場面が沢山在り過ぎて紹介しきれませんが、素晴らしい名優達のダンスシーンの中でも何度見てもほれぼれするのが、フレッド・アステアジーン・ケリーのダンスの素晴らしさです!
二人は歳も少し離れているのですが、そのダンスはやはり二人の人となりが如実に現れている様です。
 ジーンケリーのダンスには若々しさとユーモアがあって、なんだか見ているとコチラ迄踊りたく成ってきます。
もちろんメランコリーなダンスシーンもあるのですが、彼の持ち味はやはり、ハッピーな気分を身体全体で表現する様なダンスでしょう。


それに対してアステアのダンスは、何をやっても根底に流れるのはエレガンス!
帽子掛け相手にあれだけ気持ち良さそうに踊れるのは彼だけでしょうね。


二人を見ていてどちらがどうなんてダンスが素人のワタシには言えませんが、ジーン・ケリーのダンスはものすごく練習すればなんとかなりそうだけど、アステアのダンスの持つ雰囲気は絶対に他の人では出せないんじゃないでしょうかね。
 モチロン、ジーン・ケリーのダンスだって彼にしか出せない味があるんでしょうが、アステアのように鼻歌まじりに普通に呼吸する様にあんなに軽やかなステップが踏める様にはなれないんじゃないかと思うんですよ。
帽子掛けとのダンス一つとってもサラリとやってのけて
『本番で思いついてやってみたら出来ちゃった』
と言う様に見える迄には尋常じゃないくらい練習してるんでしょうけど本番では汗一つかいてない様に見えるし、全くそれを感じさせないじゃないですか。

やはり伝説の人・・・だけのことはあります。
名人とか巨匠なんて堅苦しい呼び名が似合わないところも、志ん生同様ですねえ。


で、どっちが達人名人か・・・・全く趣の異なる彼らの芸を見て、そんなことを話題にするのは野暮ってもんでしょうね。
多分二人が揃ってたら、どちらのダンスも
『THAT'S ENTERTAINMENT!』
と言うでしょうから。





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