2009年12月5日土曜日

平山郁夫画伯

 高校時代の美術の教科書に載っていた、福田平八郎の『雨』の絵のモダンさに魅せられて近代美術館に現物を観に行って初めて日本画という存在を認識して以来、油絵の具で描かれた西洋画より岩絵の具を膠で紙や絹地に定着させる日本画のマットな質感が好きになってしまいました。


 以来、10代の終わりから20代前半は日本画を集中的に見る様になり、近代美術館だけでなく当時兜町にあった山種美術館なんかにもよく通いました。


 そんな時、平山画伯のシルクロード展が開催され観に行ったのを覚えています。


 吹く風に舞い上がった細かい砂で霞む荒漠たる砂漠の景色が穏やかな色調で描かれて、今まで見て来た伝統的な日本画とは一線を画す壮大な風景、テーマと画風に感動しました。


 シルクロードには興味があったのですが、それまで写真やテレビで見ていた凶悪な程じりじり照りつける砂漠の日差し・・・現場でスケッチされる画伯には容赦なく降り注いだ日差し、それとはまた違った日差しが画伯というフィルターを通して絵の中に、そこに住む人々にも降り注いでいるのです。


画伯の絵の中にさす光は、なんだか仏様の光背から注す後光の様に感じるのです。
おそらくそれは人々や、今は廃墟となった遺跡に向けられた画伯のまなざしなんでしょうね。


若い頃広島で被爆されて惨状を目の当たりにされた画伯の画業のテーマは「平和への祈り」だったそうです。


生きながら地獄を見た人だからこそ描きたかった光だったのかもしれません。
ご冥福をお祈りします。


合掌








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