2011年1月7日金曜日

ジョンブル魂!

先日購入した『遥かなる未踏峰』(ジェフリー・アーチャー)を読了。
期待を裏切らない作品でした。
ストーリーとしては伝記、になるのでしょうか。
『何故山に登るのか?』『そこに山が在るから』
という言葉で有名な、イギリスの登山家ジョージ・マロリーの人生をたどった作品です。


 ワタシも初めて知ったのですが、一般にはエベレストに初登頂したのは1953年、やはりイギリス人のヒラリー卿とシェルパのテンジンであると言う事になっています。
しかし、それより遥か以前の1924年イギリス隊のマロリーとアーヴィングが登頂していたのではないか、という説があるのだそうです。
 二人は登頂にアタックして遭難したのですが、70年代に中国人登山家がイギリス人の遺体を見たという話もあって、1999年に捜索隊が編成されてマロリーの遺体が発見されたのです。
問題は二人が登頂前に遭難したのか、それとも登頂後下山中に遭難したのかが不明な点です。
アーヴィングの遺体や彼が持っていたカメラが発見されていないので、ハッキリした登頂の証拠が無いのです。
でも、マロリーが妻に『頂上に君の写真を置いて来る』と手紙に書いているのですが、その写真も所持品には無かった事から、マロリーは登頂したのではないかとの説もあるのです。


作品ではどちらの説をとっているかはここで書きませんが、読んでいて感じたのは、イギリス人らしい文章だなあ、というもの。
各章の終わりを締めくくる文章にウィットやユーモアを感じる物が多くて、先に読んだアメリカ人作家の言い回しとは大きく違うのを感じました。


 もう一つ、マロリーの人生を貫くその意志の強さはジョンブル魂とでもいうのでしょうか、固有の哲学に則った生き方です。
 多分に風土や宗教によって国民性は変わるのでしょうが、同じ様な島国の日本に武士道、英国に騎士道なるものが存在したというのは偶然なんでしょうか。
 華美を好まず、一旦事在る時は進んで国王又は女王陛下の為に一命をなげうって忠誠を尽くす。
『ノーブレス オブリージュ』(高貴なる者の務め)なる精神は、士農工商の頂点に居て質実剛健、その命は主君に捧げる武士道にも共通するものを感じます。


 それはともかく、人生にたったひとりめぐり逢った愛する妻や子供と離れ、自らの宿命とも言えるエベレストに魅入られて命を落としたマロリー。
登頂アタックを目前にした最後の手紙が彼の葬儀後に夫人に届くのですが、愛する妻と魅入られた山との間でジレンマに陥ったマロリーの心境が察せられる感動的な手紙です。
人は、自分にとって本当に大切な物の価値を、自分の手から失うかもしれない時になってようやく気がつく・・ということでしょうかね。


上下二巻と大部ですが、読みやすい文章なのでさほど疲れません。
マロリーの高潔な人柄に触れてみたい方は読んでみて下さい。


ところで、誰かドキュメンタリータッチの映画にしてくれないでしょうか。
でも、もしかしたら今頃イギリス人は映画化を決定してるかもしれませんね。



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